その地図にある防火線とさ
あとからできた防火線とがどうしてわかる?

泥炭層の伏流が
どういふものか承知かね?

それで結局迷ってしまふ
そのとき磁石の方角だけで
まっ赤に枯れた柏のなかや
うつぎやばらの大きな藪を
どんどん走って来れるかね?

そしてたうとう日が暮れて
みぞれが降るかもしれないが
どうだそれでもでかけるか?

はあ さうか
[#改ページ]

  三三〇
[#地付き]一九二四、一〇、二六、

(うとうとするとひやりとくる)
(かげろふがみな横なぎですよ)
(斧劈皺雪置く山となりにけりだ)
(大人昨夜眠熟せしや)
(唯《ヤー》とや云はん否《ナイン》とやいはん)
(夜半の雹雷知りたまへるや)
(雷をば覚らず喃語は聴けり)
(何でせうメチール入りの葡萄酒もって
 寅松宵に行ったでせう)
(おまけにちゃんと徳利へ入れて
 ほやほや燗をつけてゐた
 だがメチルではなかったやうだ)
(いやアルコールを獣医とかから
 何十何べん買ふさうです
 寅松なかなかやりますからな)
(湧水にでも行っただらうか)
(柏のかげに寝てますよ)
(しかし午前はよくうごいたぞ
 標石十も埋めたからな)

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