こで
月のあかりの汞から
咽喉だの胸を犯されないやう
よく気を付けて待っててください
あの綿火薬のけむりのことなぞ
もうお考へくださいますな
最後にひとつの積乱雲が
ひどくちぢれて砕けてしまふ
[#改ページ]
三三一 凍雨
[#地付き]一九二四、一〇、二四、
つめたい雨も木の葉も降り
町へでかけた用|足《タシ》たちも
背簑《ケラ》をぬらして帰ってくる
……凍らす風によみがへり
かなしい雲にわらふもの……
牆林《ヤグネ》は黝く
上根子堰の水もせゝらぎ
風のあかりやおぼろな雲に洗はれながら
きゃらの樹が塔のかたちにつくられたり
崖いっぱいの萱の根株が
妖しい紅《べに》をくゆらしたり
……さゝやく風に目を瞑り
みぞれの雲にあへぐもの……
北は鍋倉円満寺
南は太田飯豊笹間
小さな百の組合を
凍ってめぐる白の天涯
[#改ページ]
三二九
[#地付き]一九二四、一〇、二六、
野馬がかってにこさへたみちと
ほんとのみちとわかるかね?
なるほどおほばこセンホイン
その実物もたしかかね?
おんなじ型の黄いろな丘を
ずんずん数へて来れるかね?
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