して立ってゐるだけだ)
南に向いた銅いろの上半身
髪はちゞれて風にみだれる
印度の力士といふ風だ
それはその巨きな杉の樹神だらうか
あるいは風のひとりだらうか
[#改ページ]
一九八 雲
[#地付き]一九二四、九、九、
いっしゃうけんめいやってきたといっても
ねごとみたいな
にごりさけみたいなことだ
……ぬれた夜なかの焼きぼっ杭によっかかり……
おい きゃうだい
へんじしてくれ
そのまっくろな雲のなかから
[#改ページ]
一九五 塚と風
[#地付き]一九二四、九、一〇、
……わたくしに関して一つの塚とこゝを通過する風とが
あるときこんなやうな存在であることを示した……
この人ぁくすぐらへでぁのだもなす
たれかが右の方で云ふ
髪を逆立てた印度の力士ふうのものが
口をゆがめ眼をいからせて
一生けんめいとられた腕をもぎはなし
東に走って行かうとする
その肩や胸には赤い斑点がある
後光もあれば鏡もあり
青いそらには瓔珞もきらめく
子どもに乳をやる女
その右乳ぶさあまり大きく角だって
前へ
次へ
全106ページ中51ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング