して立ってゐるだけだ)
南に向いた銅いろの上半身
髪はちゞれて風にみだれる
印度の力士といふ風だ
それはその巨きな杉の樹神だらうか
あるいは風のひとりだらうか
[#改ページ]

  一九八  雲
[#地付き]一九二四、九、九、

いっしゃうけんめいやってきたといっても
ねごとみたいな
にごりさけみたいなことだ
  ……ぬれた夜なかの焼きぼっ杭によっかかり……
おい きゃうだい
へんじしてくれ
そのまっくろな雲のなかから
[#改ページ]

  一九五  塚と風
[#地付き]一九二四、九、一〇、

          ……わたくしに関して一つの塚とこゝを通過する風とが
            あるときこんなやうな存在であることを示した……

この人ぁくすぐらへでぁのだもなす
  たれかが右の方で云ふ
  髪を逆立てた印度の力士ふうのものが
  口をゆがめ眼をいからせて
  一生けんめいとられた腕をもぎはなし
  東に走って行かうとする
  その肩や胸には赤い斑点がある

  後光もあれば鏡もあり
  青いそらには瓔珞もきらめく

  子どもに乳をやる女
  その右乳ぶさあまり大きく角だって
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