り、
くるっと巻いたりするんだな
誰かはんけちを、水でしぼってもっといで
あっあっ沼の水ではだめだ、
あすこでことこと云ってゐる
タンクの脚でしぼっておいで
ぜんたい星葉木なんか
もう絶滅してゐる筈なんだが
どこにいったいあるんだらう
なんでも風の上だから
あっちの方にはちがひないが)
そっちの方には星葉木のかたちもなくて、
手近に五本巨きなドロが
かゞやかに日を分劃し
わずかに風にゆれながら
枝いっぱいに硫黄の粒を噴いてゐます
(先生、はんけち)
(ご苦労、ご苦労
ではこれを口へあてて
しづかに四五へん息をして さうさう
えへんとひとつしてごらん
もひとつえへん さう、どうだい)
(あゝ助かった
先生どうもありがたう)
(ギルダちゃん おめでたう)
(ギルダちゃん おめでたう)
ベーリング行XZ号の列車は
いま触媒の白金を噴いて、
線路に沿った黄いろな草地のカーペットを
ぶすぶす黒く焼き込みながら
梃々として走って来ます
[#改ページ]
一九一 風と杉
[#地付き]一九二四、九、六、
杉のいちいちの緑褐の
前へ
次へ
全106ページ中49ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング