緑の葉をつき出した水ぎぼうしの株を
あっちへこっちへ避けてしづかに滑ってゐる
ところがプラットフォームにならんだむすめ
そのうちひとりがいつまでたっても笑ひをやめず
みんなが肩やせなかを叩き
いろいろしてももうどうしても笑ひやめず
(ギルダちゃんたらいつまでそんなに笑ふのよ)
(あたし……やめようとおも……ふんだけれど……)
(水を呑んだらいゝんぢゃあないの)
(誰かせなかをたゝくといゝわ)
(さっきのドラゴが何か悪気を吐いたのよ)
(眼がさきにをかしいの お口がさきにをかしいの?)
(そんなこときいたってしかたないわ)
(のどが……とっても……くすぐったい……の……)
(まあ大へんだわ あら楽長さんがやってきた)
(みんなこっちへかたまって、何かしたかい)
(ギルダちゃんとてもわらってひどいのよ)
(星葉木の胞子だらう
のどをああんとしてごらん
こっちの方のお日さまへ向いて
さうさう おゝ桃いろのいゝのどだ
やっぱりさうだ
星……葉木の胞子だな
つまり何だよ 星葉木の胞子にね
四本の紐があるんだな
そいつが息の出入のたんび
湿気の加減がかはるんで、
のどでのびた
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