睡ってかまはないのだ
[#改ページ]
一五七
[#地付き]一九二四、七、
ほほじろは鼓のかたちにひるがへるし
まっすぐにあがるひばりもある
岩頸列はまだ暗い霧にひたされて
貢った暁の睡りをまもってゐるが
この峡流の出口では
麻のにほひやオゾンの風
もう電動機《モートル》も電線も鳴る
夜もすがら
風と銀河のあかりのなかで
ガスエンヂンの爆音に
灌漑水の急にそなへたわかものたち、
いまはなやかな田園の黎明のために
それらの青い草山の
波立つ萱や、
古風な稗の野末をのぞみ
東のそらの黝んだ葡萄鼠と、
赤縞入りのアラゴナイトの盃で
この清冽な朝の酒を
胸いっぱいに汲まうでないか
見たまへあすこら四列の虹の交流を
水いろのそらの渚による沙に
いまあたらしく朱金や風がちゞれ
ポプルス楊の幾本が
繊細な葉をめいめいせはしくゆすってゐる
湧くやうにひるがへり
叫ぶやうにつたはり
じつにわれらのねがひをば
いっしんに発信してゐるのだ
[#改ページ]
一五八
[#地付き]一九二四、七、一五、
(北上川は※[#「螢」の「虫」に代えて「火」、第3水準1−87−61]気をながしィ
山はまひるの
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