わくわくわくわく囲まれてゐる……
しかればきみはピアノを獲るの企画をやめて
かの中型のヴァイオルをこそ弾くべきである
燦々として析出される氷晶を
総身浴びるその謙虚なる直立は
営利の社団 賞を懸けての広告などに
きほひ出づるにふさはしからぬ
……ところがおれのてのひらからは
血がまっ青に垂れてゐる……
月をかすめる鳥の影
電信ばしらのオルゴール
泥岩を噛む水瓦斯と
一列黒いみをつくし
……てのひらの血は
ぽけっとのなかで凍りながら
たぶんぼんやり燐光をだす……
しかも結局きみがこれらの忠言を
気軽に採択できぬとすれば
その厳粛な教会風の直立も
気海の底の一つの焦慮の工場に過ぎぬ
月賦で買った緑青いろの外套に
しめったルビーの火をともし
かすかな青いけむりをあげる
一つの焦慮の工場に過ぎぬ
[#改ページ]
一四
[#地付き]一九二四、三、二四、
湧水《みづ》を呑まうとして
犬の毛皮の手袋などを泥に落し
あわててぴちゃぴちゃ
きれいな cress の波で洗ったりするものだから
きせるをくはへたり
日光に当ったりし
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