った感情を嫌ひますので
もし万一にもわたくしにもっと仕事をご期待なさるお方は
同人になれと云ったり
原稿のさいそくや集金郵便をお差し向けになったり
わたくしを苦しませぬやうおねがひしたいと存じます
けだしわたくしはいかにもけちなものではありますが
自分の畑も耕せば
冬はあちこちに南京ぶくろをぶらさげた水稲肥料の設計事務所も出して居りまして
おれたちは大いにやらう約束しようなどといふことよりは
も少し下等な仕事で頭がいっぱいなのでございますから
さう申したとて別に何でもありませぬ
北上川が一ぺん氾濫しますると
百万疋の鼠が死ぬのでございますが
その鼠らがみんなやっぱりわたくしみたいな云ひ方を
生きてるうちは毎日いたして居りまするのでございます
[#改ページ]

  二  空明と傷痍
[#地付き]一九二四、二、二〇、

※[#「景+頁」、第3水準1−94−5]気の海の青びかりする底に立ち
いかにもさういふ敬虔な風に
一きれ白い紙巻煙草《シガーレット》を燃すことは
月のあかりやらんかんの陰画
つめたい空明への貢献である
   ……ところがおれの右|掌《て》の傷は
     鋼青いろの等寒線に
前へ 次へ
全106ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング