はひとつの海蝕台地
古い劫《カルパ》の紀念碑である……
たよりなくつけられたそのみちをよぢ
憔悴苦行の梵土をまがふ
坎※[#「土へん+可」、第3水準1−15−40]な高原住者の隊が
一れつ蔭いろの馬をひいて
つめたい宙のけむりに消える
[#改ページ]
四六 山火
[#地付き]一九二四、四、六、
血紅の火が
ぼんやり尾根をすべったり
またまっ黒ないたゞきで
奇怪な王冠のかたちをつくり
焔の舌を吐いたりすれば
瑪瑙の針はげしく流れ
陰気な柳の髪もみだれる
……けたたましくも吠え立つ犬と
泥灰岩《マール》の崖のさびしい反射……
或いはコロナや破けた肺のかたちに変る
この恐ろしい巨きな夜の華の下
(夫子夫子あなたのお目も血に染みました)
酔って口口罵りながら
村びとたちが帰ってくる
[#改ページ]
五二 嬰児
[#地付き]一九二四、四、一〇、
なにいろをしてゐるともわからない
ひろぉいそらのひととこで
縁《へり》のまばゆい黒雲が
つぎからつぎと爆発される
(そらたんぽぽだ
しっかりともて)
それはひとつづついぶった太陽の射
前へ
次へ
全106ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング