ま雷が第六圏で鳴って居ります
公園はいま
町民たちでいっぱいです
[#改ページ]
四〇 烏
[#地付き]一九二四、四、六、
水いろの天の下
高原の雪の反射のなかを
風がすきとほって吹いてゐる
茶いろに黝んだからまつの列が
めいめいにみなうごいてゐる
烏が一羽菫外線に灼けながら
その一本の異状に延びた心にとまって
ずゐぶん古い水いろの夢をおもひださうとあせってゐる
風がどんどん通って行けば
木はたよりなくぐらぐらゆれて
烏は一つのボートのやうに
……烏もわざとゆすってゐる……
冬のかげろふの波に漂ふ
にもかかはらずあちこち雪の彫刻が
あんまりひっそりしすぎるのだ
[#改ページ]
四五 海蝕台地
[#地付き]一九二四、四、六、
日がおしまひの六分圏《セキスタント》にはひってから
そらはすっかり鈍くなり
台地はかすんではてない意慾の海のやう
……かなしくもまたなつかしく
斎時の春の胸を噛む
見惑塵思の海のいろ……
そこには波がしらの模様に雪ものこれば
いくつものからまつばやしや谷は
粛々起伏をつゞけながら
あえかなそらのけむりにつゞく
……それ
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