で来ておれ実家《じっか》さ行って泊《とま》って来るがらうなこっちで泣いて頼《たの》んでみなよ。おれの妹だって云えばいいがらよ。そしてさ出来ればよ、うなも町さ出はてもうんといい女子だづごともわがら。)
 おみちの胸《むね》はこの悪魔《あくま》のささやきにどかどか鳴った。それからいきなり嘉吉《かきち》をとび退《の》いて、
(何云うべ、この人あ、人ばがにして。)そして爽《さわや》かに笑《わら》った。嘉吉もごろりと寝《ね》そべって天井《てんじょう》を見ながら何べんも笑った。そこでおみちははじめて晴れ晴れじぶんの拵《こしら》えた寒天《かんてん》もたべた。餅《もち》もたべた。キャラメルの箱《はこ》と敷島《しきしま》は秋らしい日光のなかにしずかに横《よこた》わった。



底本:「ポラーノの広場」角川文庫、角川書店
   1996(平成8)年6月25日初版発行
底本の親本:「新校本 宮澤賢治全集」筑摩書房
   1995(平成7)年5月
入力:ゆうき
校正:noriko saito
2009年8月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://ww
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