ます
これがいなかのとしこしざかな。第十三課……。」
[#ここで字下げ終わり]
「何したど。大根なますだど。としこしざがなだど。あんまりけづな書物だな。」とおじいさんがいきなり云いました。そこで嘉ッコのお父さんも笑いました。
「なあにこの書物ぁ倹約《けんやく》教えだのだべも。」
ところが嘉ッコの兄さんは、すっかり怒ってしまいました。そしてまるで泣き出しそうになって、読本を鞄にしまって、
「嘉ッコ、猫ぉおれさ寄越《よこ》せじゃ。」と云いました。
「わがなぃんちゃ。厭《や》んた※[#小書き平仮名ん、152−9]ちゃ。」と嘉ッコが云いました。
「寄越せったら、寄越せ。嘉ッコぉ。わあい。寄越せじゃぁ。」
「厭《や》※[#小書き平仮名ん、152−11]たぁ、厭※[#小書き平仮名ん、152−11]たぁ、厭※[#小書き平仮名ん、152−11]たったら。」
「そだら撲《は》だぐじゃぃ。いいが。」嘉ッコの兄さんが向うで立ちあがりました。おじいさんがそれをとめ、嘉ッコがすばやく逃げかかったとき、俄《にわか》に途方《とほう》もない、空の青セメントが一ぺんに落ちたというようなガタアッという音がして家はぐら
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