白い雲が、静に翔《か》けているのでした。
「ツツンツツン、チ、チ、ツン、ツン。」
みそさざいどもは、とんだりはねたり、柳の木のなかで、じつにおもしろそうにやっています。柳の木のなかというわけは、葉の落ちてカラッとなった柳の木の外側には、すっかりガラスが張ってあるような気がするのです。それですから、嘉ッコはますます大よろこびです。
けれどもとうとう、そのすきとおるガラス函《ばこ》もこわれました。それはお母さんやおばあさんがこっちへ来ましたので、嘉ッコが「ダア。」といいながら、両手をあげたものですから、小さなみそさざいどもは、みんなまるでまん円になって、ぼろんと飛んでしまったのです。
さてみそさざいも飛びましたし、嘉ッコは走って街道《かいどう》に出ました。
電信ばしらが、
「ゴーゴー、ガーガー、キイミイガアアヨオワア、ゴゴー、ゴゴー、ゴゴー。」とうなっています。
嘉ッコは街道のまん中に小さな腕《うで》を組んで立ちながら、松並木《まつなみき》のあっちこっちをよくよく眺《なが》めましたが、松の葉がパサパサ続くばかり、そのほかにはずうっとはずれのはずれの方に、白い牛のようなものが頭だか
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