山男の四月
宮沢賢治

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)眼を皿《さら》のやうにし、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十|両《テール》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)たうとう※[#「穴/牛」、第4水準2−83−13]《らう》に
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 山男は、金いろの眼を皿《さら》のやうにし、せなかをかがめて、にしね山のひのき林のなかを、兎《うさぎ》をねらつてあるいてゐました。
 ところが、兎はとれないで、山鳥がとれたのです。
 それは山鳥が、びつくりして飛びあがるとこへ、山男が両手をちぢめて、鉄砲だまのやうにからだを投げつけたものですから、山鳥ははんぶん潰《つぶ》れてしまひました。
 山男は顔をまつ赤にし、大きな口をにやにやまげてよろこんで、そのぐつたり首を垂れた山鳥を、ぶらぶら振りまはしながら森から出てきました。
 そして日あたりのいゝ南向きのかれ芝の上に、いきなり獲物を投げだして、ばさばさの赤い髪毛《かみけ》を指でかきまはしながら、肩を
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