を歩いて行《ゆ》くようにおもいました。すると向《むこ》うにポーセがしもやけのある小さな手で眼《め》をこすりながら立っていてぼんやりチュンセに云《い》いました。
「兄さんなぜあたいの青いおべべ裂《さ》いたの。」チュンセはびっくりしてはね起《お》きて一生けん命そこらをさがしたり考えたりしてみましたがなんにもわからないのです。どなたかポーセを知っているかたはないでしょうか。けれども私《わたくし》にこの手紙を云いつけたひとが云っていました「チュンセはポーセをたずねることはむだだ。なぜならどんなこどもでも、また、はたけではたらいているひとでも、汽車の中で苹果《りんご》をたべているひとでも、また歌う鳥や歌わない鳥、青や黒やのあらゆる魚、あらゆるけものも、あらゆる虫も、みんな、みんな、むかしからのおたがいのきょうだいなのだから。チュンセがもしもポーセをほんとうにかあいそうにおもうなら大きな勇気《ゆうき》を出してすべてのいきもののほんとうの幸福《こうふく》をさがさなければいけない。それはナムサダルマプフンダリカサスートラというものである。チュンセがもし勇気のあるほんとうの男の子ならなぜまっしぐらにそれ
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