ました。
ところがポーセは、十一月ころ、俄《にわ》かに病気《びょうき》になったのです。おっかさんもひどく心配《しんぱい》そうでした。チュンセが行って見ますと、ポーセの小さな唇《くちびる》はなんだか青くなって、眼《め》ばかり大きくあいて、いっぱいに涙《なみだ》をためていました。チュンセは声が出ないのを無理《むり》にこらえて云《い》いました。「おいら、何でも呉《く》れてやるぜ。あの銅《どう》の歯車《はぐるま》だって欲《ほ》しけややるよ。」けれどもポーセはだまって頭をふりました。息《いき》ばかりすうすうきこえました。
チュンセは困《こま》ってしばらくもじもじしていましたが思い切ってもう一ぺん云《い》いました。「雨雪《あめゆき》とって来てやろか。」「うん。」ポーセがやっと答えました。チュンセはまるで鉄砲丸《てっぽうだま》のようにおもてに飛《と》び出しました。おもてはうすくらくてみぞれがびちょびちょ降《ふ》っていました。チュンセは松《まつ》の木の枝《えだ》から雨雪を両手《りょうて》にいっぱいとって来ました。それからポーセの枕《まくら》もとに行って皿《さら》にそれを置《お》き、さじでポーセにた
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