うしども》が来まして、この蛇を見てびっくりするほどよろこんで云《い》いました。
「こんなきれいな珍《めず》らしい皮《かわ》を、王様《おうさま》に差《さ》しあげてかざりにしてもらったらどんなに立派《りっぱ》だろう。」
そこで杖《つえ》でその頭をぐっとおさえ刀でその皮をはぎはじめました。竜は目をさまして考えました。
「おれの力はこの国さえもこわしてしまえる。この猟師《りょうし》なんぞはなんでもない。いまおれがいきをひとつすれば毒《どく》にあたってすぐ死《し》んでしまう。けれども私はさっき、もうわるいことをしないと誓《ちか》ったしこの猟師をころしたところで本当にかあいそうだ。もはやこのからだはなげすてて、こらえてこらえてやろう。」
すっかり覚悟《かくご》がきまりましたので目をつぶって痛《いた》いのをじっとこらえ、またその人を毒《どく》にあてないようにいきをこらして一心に皮をはがれながらくやしいというこころさえ起《おこ》しませんでした。
猟師はまもなく皮をはいで行ってしまいました。
竜はいまは皮のない赤い肉ばかりで地によこたわりました。
この時は日がかんかんと照《て》って土は非常《ひじょう》に
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