おとづれてきみはあれども
あゝきみもさかなの歯して
青々とうちもわらへる
その群のひとりなりけり
[#改ページ]
S博士に
博士よきみの声顫ひ
暗きに面をそむくるは
熱とあへぎに耐へずして
今宵わが身の果てんとか
あゝ勇猛と精進の
ねがひはつねにありしかど
あしたあしたを望みつゝ
早くいのちは過ぎにけり
しかればきみが求むらん
奇蹟はわれが分ならず
たゞ知りたまへちゝはゝに
そむけるはかくさびしく死する
[#改ページ]
〔美しき夕陽の色なして〕
美しき夕陽の色なして
一つの呼気は一年を
わが上方に展くなり
[#改ページ]
〔まどろみ過ぐる百年は〕
まどろみ過ぐる百年は
醒めての時といづかたぞ
いまわれやみてわがいのち
いつともしらぬ今日なれば
[#改ページ]
〔疾いま革まり来て〕
疾いま革まり来て
わが額に死の気配あり
いざさらばわが業のまゝ
いづくにもふたゝび生《あ》れん
たゞひたにうちねがへるは
すこやけき身をこそ受けて
もろもろの恩をも報じ
もろびとの苦をも負ひ得ん
さてはまたなやみのなかと
数しらぬなげきのなかに
すなほなるこ
前へ
次へ
全12ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング