そうだ。僕何かいいものをやりたいな」
「うん、今度夜具を一枚持って行ってやろう。山男は夜具を綿入の代りに着るかも知れない。それから団子も持って行こう」
亮二は叫びました。
「着物と団子だけじゃつまらない。もっともっといいものをやりたいな。山男が嬉《うれ》しがって泣いてぐるぐるはねまわって、それからからだが天に飛んでしまうくらいいいものをやりたいなあ」
おじいさんは消えたランプを取りあげて、
「うん、そういういいものあればなあ。さあ、うちへ入って豆をたべろ。そのうちに、おとうさんも隣りから帰るから」と言いながら、家の中にはいりました。
亮二はだまって青い斜めなお月さまをながめました。
風が山の方で、ごうっと鳴っております。
底本:「風の又三郎」角川文庫、角川書店
1988(昭和63)年12月10日初版発行
1990(平成2)年10月20日8版発行
入力:土屋隆
校正:noriko saito
2005年6月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全3ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング