長靴をぶらさげたよ。はっはっは、いや迷惑《めいわく》したよ。それから英国ばかりじゃない、十二月ころ兵営へ行ってみると、おい、あかりをけしてこいと上等兵|殿《どの》に云われて新兵が電燈をふっふっと吹《ふ》いて消そうとしているのが毎年五人や六人はある。おれの兵隊にはそんなものは一人もないからな。おまえの町だってそうだ、はじめて電燈がついたころはみんながよく、電気会社では月に百|石《こく》ぐらい油をつかうだろうかなんて云ったもんだ。はっはっは、どうだ、もっともそれはおれのように勢力|不滅《ふめつ》の法則や熱力学第二則がわかるとあんまりおかしくもないがね、どうだ、ぼくの軍隊は規律がいいだろう。軍歌にもちゃんとそう云ってあるんだ。」
 でんしんばしらは、みんなまっすぐを向いて、すまし込《こ》んで通り過ぎながら一きわ声をはりあげて、
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「ドッテテドッテテ、ドッテテド
 でんしんばしらのぐんたいの
 その名せかいにとどろけり。」
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と叫びました。
 そのとき、線路の遠くに、小さな赤い二つの火が見えました。するとじいさんはまるであわててしまいました。
「あ
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