はみんながよく、電気会社では月に百石ぐらゐ油をつかふだらうかなんて云つたもんだ。はつはつは、どうだ、もつともそれはおれのやうに勢力不滅の法則や熱力学第二則がわかるとあんまりをかしくもないがね、どうだ、ぼくの軍隊は規律がいゝだらう。軍歌にもちやんとさう云つてあるんだ。」
でんしんばしらは、みんなまつすぐを向いて、すまし込んで通り過ぎながら一きは声をはりあげて、
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「ドツテテドツテテ、ドツテテド
でんしんばしらのぐんたいの
その名せかいにとゞろけり。」
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と叫びました。
そのとき、線路の遠くに、小さな赤い二つの火が見えました。するとぢいさんはまるであわててしまひました。
「あ、いかん、汽車がきた。誰《たれ》かに見附かつたら大へんだ。もう進軍をやめなくちやいかん。」
ぢいさんは片手を高くあげて、でんしんばしらの列の方を向いて叫びました。
「全軍、かたまれい、おいつ。」
でんしんばしらはみんな、ぴつたりとまつて、すつかりふだんのとほりになりました。軍歌はただのぐわあんぐわあんといふうなりに変つてしまひました。
汽車がごうとやつてきまし
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