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 一本のでんしんばしらが、ことに肩をそびやかして、まるでうで木もがりがり鳴るくらゐにして通りました。
 みると向ふの方を、六本うで木の二十二の瀬戸もののエボレツトをつけたでんしんばしらの列が、やはりいつしよに軍歌をうたつて進んで行きます。
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「ドツテテドツテテ、ドツテテド
 二本うで木の工兵隊
 六本うで木の竜騎兵
 ドツテテドツテテ、ドツテテド
 いちれつ一万五千人
 はりがねかたくむすびたり」
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 どういふわけか、二本のはしらがうで木を組んで、びつこを引いていつしよにやつてきました。そしていかにもつかれたやうにふらふら頭をふつて、それから口をまげてふうと息を吐《つ》き、よろよろ倒れさうになりました。
 するとすぐうしろから来た元気のいゝはしらがどなりました。
「おい、はやくあるけ。はりがねがたるむぢやないか。」
 ふたりはいかにも辛《つら》さうに、いつしよにこたへました。
「もうつかれてあるけない。あしさきが腐り出したんだ。長靴のタールもなにももうめちやくちやになつてるんだ。」
 うしろのはしらはもどかしさうに叫び
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