ました。
「はやくあるけ、あるけ。きさまらのうち、どつちかが参つても一万五千人みんな責任があるんだぞ。あるけつたら。」
二人はしかたなくよろよろあるきだし、つぎからつぎとはしらがどんどんやつて来ます。
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「ドツテテドツテテ、ドツテテド
やりをかざれるとたん帽
すねははしらのごとくなり。
ドツテテドツテテ、ドツテテド
肩にかけたるエボレツト
重きつとめをしめすなり。」
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二人の影ももうずうつと遠くの緑青《ろくしやう》いろの林の方へ行つてしまひ、月がうろこ雲からぱつと出て、あたりはにはかに明るくなりました。
でんしんばしらはもうみんな、非常なご機嫌です。恭一の前に来ると、わざと肩をそびやかしたり、横めでわらつたりして過ぎるのでした。
ところが愕《おど》ろいたことは、六本うで木のまた向ふに、三本うで木のまつ赤なエボレツトをつけた兵隊があるいてゐることです。その軍歌はどうも、ふしも歌もこつちの方とちがふやうでしたが、こつちの声があまり高いために、何をうたつてゐるのか聞きとることができませんでした。こつちはあひかはらずどんどんやつて
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