ろ悪口を聞いていましたが、ことに、今の蚊の悪口を聞いて、いよいよベゴ石を、馬鹿にしはじめました。
 そして、赤い小さな頭巾をかぶったまま、踊《おど》りはじめました。
「ベゴ黒助、ベゴ黒助、
 黒助どんどん、
 あめがふっても黒助、どんどん、
 日が照っても、黒助どんどん。

 ベゴ黒助、ベゴ黒助、
 黒助どんどん、
 千年たっても、黒助どんどん、
 万年たっても、黒助どんどん。」
 ベゴ石は笑いながら、
「うまいよ。なかなかうまいよ。しかしその歌は、僕はかまわないけれど、お前たちには、よくないことになるかも知れないよ。僕が一つ作ってやろう。これからは、そっちをおやり。ね、そら、
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お空。お空。お空のちちは、
つめたい雨の ザァザザザ、
かしわのしずくトンテントン、
まっしろきりのポッシャントン。
お空。お空。お空のひかり、
おてんとさまは、カンカンカン、
月のあかりは、ツンツンツン、
ほしのひかりの、ピッカリコ。」
[#ここで字下げ終わり]
「そんなものだめだ。面白《おもしろ》くもなんともないや。」
「そうか。僕は、こんなこと、まずいからね。」
 ベゴ石は、しずか
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