いっぱいにあらはれましたので、稜のある石どもは、みんな雨のお酒のことや、雪の団子のことを考へはじめました。そこでべゴ石も、しづかに、まんまる大将の、お日さまと青ぞらとを見あげました。
その次の日、又、霧がかゝりましたので、稜石どもは、又べゴ石をからかひはじめました。実は、たゞからかったつもりだっただけです。
「べゴさん。おれたちは、みんな、稜がしっかりしてゐるのに、お前さんばかり、なぜそんなにくるくるしてるだらうね。一緒に噴火のとき、落ちて来たのにね。」
「僕は、生れてまだまっかに燃えて空をのぼるとき、くるくるくるくる、からだがまはったからね。」
「ははあ、僕たちは、空へのぼるときも、のぼる位のぼって、一寸《ちょっと》とまった時も、それから落ちて来るときも、いつも、じっとしてゐたのに、お前さんだけは、なぜそんなに、くるくるまはったらうね。」
その癖、こいつらは、噴火で砕けて、まっくろな煙と一緒に、空へのぼった時は、みんな気絶してゐたのです。
「さあ、僕は一向まはらうとも思はなかったが、ひとりでからだがまはって仕方なかったよ。」
「ははあ、何かこはいことがあると、ひとりでからだがふる
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