たかい。」
「ありがたう。僕《ぼく》は、おなかが痛くなかったよ。」とべゴ石は、霧の中でしづかに云ひました。
「アァハハハハ。アァハハハハハ。」稜のある石は、みんな一度に笑ひました。
「ベゴさん。こんちは。ゆふべは、ふくろふがお前さんに、たうがらしを持って来てやったかい。」
「いゝや。ふくろふは、昨夜《ゆふべ》、こっちへ来なかったやうだよ。」
「アァハハハハ。アァハハハハハ。」稜のある石は、もう大笑ひです。
「ベゴさん。今日は。昨日の夕方、霧の中で、野馬がお前さんに小便をかけたらう。気の毒だったね。」
「ありがたう。おかげで、そんな目には、あはなかったよ。」
「アァハハハハ。アァハハハハハ。」みんな大笑ひです。
「べゴさん。今日は。今度新らしい法律が出てね、まるいものや、まるいやうなものは、みんな卵のやうに、パチンと割ってしまふさうだよ。お前さんも早く逃げたらどうだい。」
「ありがたう。僕は、まんまる大将のお日さんと一しょに、パチンと割られるよ。」
「アァハハハハ。アァハハハハハ。どうも馬鹿《ばか》で手がつけられない。」
丁度その時、霧が晴れて、お日様の光がきん色に射《さ》し、青ぞらが
前へ
次へ
全10ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング