そしてのろしは高くそらにかかつて光りつづけました。
「ああマジエランの星雲だ。さあもうきつと僕は僕のために、僕のお母さんのために、カムパネルラのために、みんなのために、ほんたうのほんたうの幸福をさがすぞ。」
ジヨバンニは唇を噛んで、そのいちばん幸福なそのひとのために、そのマジエランの星雲をのぞんで立ちました。
「さあ、切符をしつかり持つておいで。お前はもう夢の鐵道の中でなしに本當の世界の火やはげしい波の中を大股にまつすぐに歩いて行かなければいけない。天の川のなかでたつた一つのほんたうのその切符を決しておまへはなくしてはいけない。」
あのセロのやうな聲がしたと思ふとジヨバンニは、あの天の川がもうまるで遠く遠くなつて風が吹き、自分はまつすぐに草の丘に立つてゐるのを見、また遠くからあのブルカニロ博士の足おとのしづかに近づいて來るのをききました。
「ありがたう。私は大へんいい實驗をした。私はこんなしづかな場所で、遠くから私の考へを人に傳へる實驗をしたいとさつき考へてゐた。お前の云つた言葉はみんな私の手帖にとつてある。さあ歸つておやすみ。お前は夢の中で決心したとほりまつすぐに進んで行くが
前へ
次へ
全90ページ中88ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング