向うの河岸に二本の電信ばしらが丁度兩方から腕を組んだやうに赤い腕木をつらねて立つてゐました。
「カムパネルラ、僕たち一緒に行かうねえ。」ジヨバンニが斯う云ひながらふりかへつて見ましたら、そのいままでカムパネルラの坐つてゐた席に、もうカムパネルラの形は見えず黒いびろうどばかりひかつてゐました。
 ジヨバンニはまるで鐵砲彈のやうに立ちあがりました。そして窓の外へからだを乘り出して、力いつぱいはげしく胸をうつて叫び、それからもう咽喉いつぱい泣きだしました。
 もうそこらが一ぺんにまつくらになつたやうに思ひました。そのとき、
「おまへはいつたい何を泣いてゐるの。ちよつとこつちをごらん。」いままでたびたび聞えた、あのやさしいセロのやうな聲がジヨバンニのうしろから聞えました。
 ジヨバンニは、はつと思つて涙をはらつてそつちをふり向きました。
 さつきまでカムパネルラの坐つてゐた席に黒い大きな帽子をかぶつた青白い顏の痩せた大人が、やさしくわらつて大きな一册の本をもつてゐました。
「おまへのともだちがどこかへ行つたのだらう。あのひとはね、ほんたうにこんや遠くへ行つたのだ。おまへはもうカムパネルラをさが
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