ンが白い鳥の羽根を頭につけ、たくさんの石を腕と胸にかざり、小さな弓に矢を番へて一目散に汽車を追つて來るのでした。
「あら、インデアンですよ。インデアンですよ。ごらんなさい。」
黒服の青年も眼をさましました。
ジヨバンニもカムパネルラも立ちあがりました。
「走つて來るわ。あら、走つて來るわ。追ひかけてゐるんでせう。」
「いいえ、汽車を追つてるんぢやないんですよ、獵をするか踊るかしてるんですよ。」
青年はいまどこに居るか忘れたといふ風に、ポケツトに手を入れて立ちながら云ひました。
まつたくインデアンは半分は踊つてゐるやうでした。第一かけるにしても足のふみやうがもつと經濟もとれ、本氣にもなれさうでした。にはかにくつきり白いその羽根は前の方へ倒れるやうになり、インデアンはぴたつと立ちどまつてすばやく弓を空にひきました。そこから一羽の鶴がふらふらと落ちて來て、また走り出したインデアンの大きくひろげた兩手に落ちこみました。
インデアンはうれしさうに立つてわらひました。そしてその鶴をもつてこつちを見てゐる影も、もうどんどん小さく遠くなり、電しんばしらの碍子がきらつきらつと續いて二つばかり光
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