笑ひながら男の子をジヨバンニのとなりに坐らせました。
それから女の子にやさしくカムパネルラのとなりの席を指さしました。女の子はすなほにそこへ坐つてきちんと兩手を組み合せました。
「ぼく、おほねえさん。お父さんのとこへ行くんだよう。」腰掛けたばかりの男の子は顏を變にして、燈臺看守の向うの席に坐つたばかりの青年に云ひました。青年は何とも云へず悲しさうな顏をして、ぢつとその子の、ちぢれてぬれた頭を見ました。
女の子は、いきなり兩手を顏にあててしくしく泣いてしまひました。
「お父さんやきくよねえさんはまだいろいろお仕事があるのです。けれどももうすぐあとからいらつしやいます。それよりも、おつかさんはどんなに永く待つていらつしやつたでせう。
わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたつてゐるだらう、雪の降る朝にみんなと手をつないで、ぐるぐるにはとこのやぶをまはつてあそんでゐるだらうかと考へたり、ほんたうに待つて、心配していらつしやるんですから、早く行つて、おつかさんにお目にかかりませうね。」
「うん、だけど僕、船に乘らなけあよかつたなあ。」
「ええ、けれど、ごらんなさい。そら、どうです。あの立
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