こまででも行ける筈でさあ。あなた方大したもんですね。」
「何だかわかりません。」ジヨバンニが赤くなつて答へながら、それを又疊んでかくしに入れました。
 そしてきまりが惡いのでカムパネルラと二人、また窓の外をながめてゐましたが、その鳥捕りの時々大したもんだといふやうに、ちらちらこつちを見てゐるのがぼんやりわかりました。
「もうぢき鷲の停車場だよ。」カムパネルラが向う岸の、三つならんだ小さな青じろい三角標と地圖とを見較べて云ひました。
 ジヨバンニはなんだかわけもわからずに、となりの鳥捕りが氣の毒でたまらなくなりました。
 鷺をつかまへて、せいせいしたとよろこんだり、白いきれでそれをくるくる包んだり、ひとの切符をびつくりしたやうに横目で見て、あわててほめだしたり、そんなことを一々考へてゐると、もうその見ず知らずの鳥捕りのために、ジヨバンニの持つてゐるものでも食べるものでもなんでもやつてしまひたい、もうこの人のほんたうの幸になるなら、自分があの光る天の川の河原に立つて、百年つづけて立つて鳥をとつてやつてもいいといふやうな氣がして、どうしてももう默つてゐられなくなりました。ほんたうにあなたのほ
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