れかが歌つてゐるやうな氣持ちがしてきました。
それはなつかしい星めぐりの歌を、くりかへしくりかへし歌つてゐるにちがひありませんでした。
ジヨバンニはそれにうつとりきき入つてをりました。
六 銀河ステーシヨン
そしてジヨバンニはすぐうしろの天氣輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になつて、しばらく螢のやうに、ぺかぺか消えたりともつたりしてゐるのを見ました。それはだんだんはつきりして、とうとうりんとうごかないやうになり、濃い鋼青のそらにたちました。いま新らしく灼いたばかりの青い鋼の板のやうな、そらの野原に、まつすぐにすきつと立つたのです。
するとどこかでふしぎな聲が、銀河ステーシヨン、銀河ステーシヨンと云つたかと思ふと、いきなり眼の前が、ぱつと明るくなつて億萬の螢烏賊の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈めたといふ工合。またダイアモンド會社で、ねだんがやすくならないために、わざと穫れないふりをしてかくしておいた金剛石を、誰かがいきなりひつくりかへしてばら撒いたといふ風に、眼の前がさあつと明るくなつて、ジヨバンニは思はず何べんも眼を擦つてしまひました。
氣がついてみ
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