のお父さんの博士のうちでカムパネルラといつしよに讀んだ雜誌のなかにあつたのだ。それどこでなくカムパネルラは、その雜誌を讀むと、すぐお父さんの書齋から巨きな本をもつてきて、ぎんがといふところをひろげ、まつ黒な頁いつぱいに白い點々のある美しい寫眞を二人でいつまでも見たのでした。
それをカムパネルラが忘れる筈もなかつたのに、すぐ返事をしなかつたのは、このごろぼくが、朝にも午後にも仕事がつらく、學校に出てももうみんなともはきはき遊ばず、カムパネルラともあんまり物を云はないやうになつたので、カムパネルラがそれを知つて氣の毒がつてわざと返事をしなかつたのだ。
さう考へるとたまらないほど、じぶんもカムパネルラもあはれなやうな氣がするのでした。
先生はまた云ひました。
「ですからもしもこの天の川がほんたうに川だと考へるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利の粒にもあたるわけです。またこれを巨きな乳の流れと考へるなら、もつと天の川とよく似てゐます。つまりその星はみな、乳のなかにまるで細かにうかんでゐる脂油の球にもあたるのです。そんなら何がその川の水にあたるかと云ひますと、それは
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