ました。
「双子《ふたご》のお星さまのお宮《みや》ってなんだい」
「あたし前になんべんもお母《っか》さんから聞いたわ。ちゃんと小さな水晶《すいしょう》のお宮《みや》で二つならんでいるからきっとそうだわ」
「はなしてごらん。双子《ふたご》のお星さまが何をしたっての」
「ぼくも知ってらい。双子《ふたご》のお星さまが野原へ遊《あそ》びにでて、からすと喧嘩《けんか》したんだろう」
「そうじゃないわよ。あのね、天の川の岸《きし》にね、おっかさんお話しなすったわ、……」
「それから彗星《ほうきぼし》がギーギーフーギーギーフーて言《い》って来たねえ」
「いやだわ、たあちゃん、そうじゃないわよ。それはべつの方だわ」
「するとあすこにいま笛《ふえ》を吹《ふ》いているんだろうか」
「いま海へ行ってらあ」
「いけないわよ。もう海からあがっていらっしゃったのよ」
「そうそう。ぼく知ってらあ、ぼくおはなししよう」

 川の向こう岸《ぎし》がにわかに赤くなりました。
 楊《やなぎ》の木や何かもまっ黒にすかし出され、見えない天の川の波《なみ》も、ときどきちらちら針《はり》のように赤く光りました。まったく向《む》こう
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