りょう》をするか踊《おど》るかしてるんですよ」
 青年はいまどこにいるか忘《わす》れたというふうにポケットに手を入れて立ちながら言《い》いました。
 まったくインデアンは半分《はんぶん》は踊《おど》っているようでした。第一《だいいち》かけるにしても足のふみようがもっと経済《けいざい》もとれ本気にもなれそうでした。にわかにくっきり白いその羽根《はね》は前の方へ倒《たお》れるようになり、インデアンはぴたっと立ちどまって、すばやく弓《ゆみ》を空にひきました。そこから一|羽《わ》の鶴《つる》がふらふらと落《お》ちて来て、また走り出したインデアンの大きくひろげた両手《りょうて》に落《お》ちこみました。インデアンはうれしそうに立ってわらいました。そしてその鶴《つる》をもってこっちを見ている影《かげ》も、もうどんどん小さく遠くなり、電しんばしらの碍子《がいし》がきらっきらっと続《つづ》いて二つばかり光って、またとうもろこしの林になってしまいました。こっち側《がわ》の窓《まど》を見ますと汽車はほんとうに高い高い崖《がけ》の上を走っていて、その谷の底《そこ》には川がやっぱり幅《はば》ひろく明るく流《なが
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