》らせながら黒い瞳《ひとみ》をうっとりと遠くへ投《な》げて何を見るでもなしに考え込《こ》んでいるのでしたし、カムパネルラはまださびしそうにひとり口笛《くちぶえ》を吹《ふ》き、男の子はまるで絹《きぬ》で包《つつ》んだ苹果《りんご》のような顔いろをしてジョバンニの見る方を見ているのでした。
 突然《とつぜん》とうもろこしがなくなって巨《おお》きな黒い野原《のはら》がいっぱいにひらけました。
 新世界交響楽《しんせかいこうきょうがく》はいよいよはっきり地平線《ちへいせん》のはてから湧《わ》き、そのまっ黒な野原《のはら》のなかを一人のインデアンが白い鳥の羽根《はね》を頭につけ、たくさんの石を腕《うで》と胸《むね》にかざり、小さな弓《ゆみ》に矢《や》をつがえていちもくさんに汽車を追《お》って来るのでした。
「あら、インデアンですよ。インデアンですよ。おねえさまごらんなさい」
 黒服《くろふく》の青年も眼《め》をさましました。
 ジョバンニもカムパネルラも立ちあがりました。
「走って来るわ、あら、走って来るわ。追《お》いかけているんでしょう」
「いいえ、汽車を追《お》ってるんじゃないんですよ。猟《
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