の岸《きし》に、銀《ぎん》いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波《なみ》を立てているのでした。
「月夜でないよ。銀河《ぎんが》だから光るんだよ」ジョバンニは言《い》いながら、まるではね上がりたいくらい愉快《ゆかい》になって、足をこつこつ鳴らし、窓《まど》から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛《くちぶえ》を吹《ふ》きながら一生けん命《めい》延《の》びあがって、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、はっきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラスよりも水素《すいそ》よりもすきとおって、ときどき眼《め》のかげんか、ちらちら紫《むらさき》いろのこまかな波《なみ》をたてたり、虹《にじ》のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流《なが》れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光《りんこう》の三角標《さんかくひょう》が、うつくしく立っていたのです。遠いものは小さく、近いものは大きく、遠いものは橙《だいだい》や黄いろではっきりし、近いものは青白く少しかすんで、あるいは三角形《さんか
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