く赤く見え、その中にはたくさんの旅人《たびびと》が、苹果《りんご》をむいたり、わらったり、いろいろなふうにしていると考えますと、ジョバンニは、もうなんとも言《い》えずかなしくなって、また眼《め》をそらに挙《あ》げました。
[#天から5字下げ](この間|原稿《げんこう》五|枚分《まいぶん》なし)
 ところがいくら見ていても、そのそらは、ひる先生の言《い》ったような、がらんとした冷《つめ》たいとこだとは思われませんでした。それどころでなく、見れば見るほど、そこは小さな林や牧場《ぼくじょう》やらある野原《のはら》のように考えられてしかたなかったのです。そしてジョバンニは青い琴《こと》の星が、三つにも四つにもなって、ちらちらまたたき、脚《あし》が何べんも出たり引っ込《こ》んだりして、とうとう蕈《きのこ》のように長く延《の》びるのを見ました。またすぐ眼《め》の下のまちまでが、やっぱりぼんやりしたたくさんの星の集《あつ》まりか一つの大きなけむりかのように見えるように思いました。

     六 銀河《ぎんが》ステーション

 そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪《てんきりん》の柱《はしら》がいつか
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