ましたが、急《いそ》いで、
「では、よし」と言《い》いながら、自分で星図を指《さ》しました。
「このぼんやりと白い銀河《ぎんが》を大きないい望遠鏡《ぼうえんきょう》で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさんそうでしょう」
ジョバンニはまっ赤《か》になってうなずきました。けれどもいつかジョバンニの眼《め》のなかには涙《なみだ》がいっぱいになりました。そうだ僕《ぼく》は知っていたのだ、もちろんカムパネルラも知っている、それはいつかカムパネルラのお父さんの博士《はかせ》のうちでカムパネルラといっしょに読んだ雑誌《ざっし》のなかにあったのだ。それどこでなくカムパネルラは、その雑誌《ざっし》を読むと、すぐお父さんの書斎《しょさい》から巨《おお》きな本をもってきて、ぎんがというところをひろげ、まっ黒な頁《ページ》いっぱいに白に点々《てんてん》のある美《うつく》しい写真《しゃしん》を二人でいつまでも見たのでした。それをカムパネルラが忘《わす》れるはずもなかったのに、すぐに返事《へんじ》をしなかったのは、このごろぼくが、朝にも午後にも仕事《しごと》がつらく、学校に出てももうみん
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