「ケンタウルス、露《つゆ》をふらせ」と叫《さけ》んで走ったり、青いマグネシヤの花火を燃《も》したりして、たのしそうに遊《あそ》んでいるのでした。けれどもジョバンニは、いつかまた深《ふか》く首《くび》をたれて、そこらのにぎやかさとはまるでちがったことを考えながら、牛乳屋《ぎゅうにゅうや》の方へ急《いそ》ぐのでした。
ジョバンニは、いつか町はずれのポプラの木が幾本《いくほん》も幾本《いくほん》も、高く星ぞらに浮《う》かんでいるところに来ていました。その牛乳屋《ぎゅうにゅうや》の黒い門《もん》をはいり、牛のにおいのするうすくらい台所《だいどころ》の前に立って、ジョバンニは帽子《ぼうし》をぬいで、
「今晩《こんばん》は」と言《い》いましたら、家の中はしいんとして誰《だれ》もいたようではありませんでした。
「今晩《こんばん》は、ごめんなさい」ジョバンニはまっすぐに立ってまた叫《さけ》びました。するとしばらくたってから、年とった女の人が、どこかぐあいが悪《わる》いようにそろそろと出て来て、何か用かと口の中で言《い》いました。
「あの、今日、牛乳《ぎゅうにゅう》が僕《ぼく》※[#小書き平仮名ん、1
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