ぬの》の袋《ふくろ》の中に入れるのでした。すると鷺《さぎ》は、蛍《ほたる》のように、袋《ふくろ》の中でしばらく、青くぺかぺか光ったり消《き》えたりしていましたが、おしまいとうとう、みんなぼんやり白くなって、眼《め》をつぶるのでした。ところが、つかまえられる鳥よりは、つかまえられないで無事《ぶじ》に天の川の砂《すな》の上に降《お》りるものの方が多《おお》かったのです。それは見ていると、足が砂《すな》へつくや否《いな》や、まるで雪《ゆき》の解《と》けるように、縮《ちぢ》まってひらべったくなって、まもなく溶鉱炉《ようこうろ》から出た銅《どう》の汁《しる》のように、砂《すな》や砂利《じゃり》の上にひろがり、しばらくは鳥の形が、砂《すな》についているのでしたが、それも二、三|度《ど》明るくなったり暗《くら》くなったりしているうちに、もうすっかりまわりと同じいろになってしまうのでした。
鳥捕《とりと》りは、二十|疋《ぴき》ばかり、袋《ふくろ》に入れてしまうと、急《きゅう》に両手《りょうて》をあげて、兵隊《へいたい》が鉄砲弾《てっぽうだま》にあたって、死《し》ぬときのような形をしました。と思ったら、もうそこに鳥捕《とりと》りの形はなくなって、かえって、
「ああせいせいした。どうもからだにちょうど合うほど稼《かせ》いでいるくらい、いいことはありませんな」というききおぼえのある声が、ジョバンニの隣《とな》りにしました。見ると鳥捕《とりと》りは、もうそこでとって来た鷺《さぎ》を、きちんとそろえて、一つずつ重《かさ》ね直《なお》しているのでした。
「どうして、あすこから、いっぺんにここへ来たんですか」ジョバンニが、なんだかあたりまえのような、あたりまえでないような、おかしな気がして問《と》いました。
「どうしてって、来ようとしたから来たんです。ぜんたいあなた方は、どちらからおいでですか」
ジョバンニは、すぐ返事《へんじ》をしようと思いましたけれども、さあ、ぜんたいどこから来たのか、もうどうしても考えつきませんでした。カムパネルラも、顔をまっ赤にして何か思い出そうとしているのでした。
「ああ、遠くからですね」鳥捕《とりと》りは、わかったというように雑作《ぞうさ》なくうなずきました。
九 ジョバンニの切符《きっぷ》
「もうここらは白鳥|区《く》のおしまいです。ごらんなさい。
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