革トランク
宮沢賢治

−−−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)楢岡《ならをか》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)建築図案設計工事|請負《うけおひ》と

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#小書き平仮名ん、229−10]
−−

 斉藤平太は、その春、楢岡《ならをか》の町に出て、中学校と農学校、工学校の入学試験を受けました。三つとも駄目《だめ》だと思ってゐましたら、どうしたわけか、まぐれあたりのやうに工学校だけ及第しました。一年と二年とはどうやら無事で、算盤《そろばん》の下手な担任教師が斉藤平大の通信簿の点数の勘定を間違った為《ため》に首尾よく卒業いたしました。
(こんなことは実にまれです。)
 卒業するとすぐ家へ戻されました。家は農業でお父さんは村長でしたが平太はお父さんの賛成によって、家の門の処《ところ》に建築図案設計工事|請負《うけおひ》といふ看板をかけました。
 すぐに二つの仕事が来ました。一つは村の消防小屋と相談所とを兼ねた
次へ
全9ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング