すか。よく存《ぞん》じております」
ホモイは大いばりで言《い》いました。
「そうか。そんならいいがね。僕《ぼく》、お前を軍曹《ぐんそう》にするよ。そのかわり少し働《はたら》いてくれないかい」
むぐらはびくびくして尋《たず》ねました。
「へいどんなことでございますか」
ホモイがいきなり、
「鈴蘭《すずらん》の実《み》を集《あつ》めておくれ」と言《い》いました。
むぐらは土の中で冷汗《ひやあせ》をたらして頭をかきながら、
「さあまことに恐《おそ》れ入りますが私は明るい所《ところ》の仕事《しごと》はいっこう無調法《ぶちょうほう》でございます」と言《い》いました。
ホモイはおこってしまって、
「そうかい。そんならいいよ。頼《たの》まないから。あとで見ておいで。ひどいよ」と叫《さけ》びました。
むぐらは、
「どうかご免《めん》をねがいます。私は長くお日様《ひさま》を見ますと死《し》んでしまいますので」としきりにおわびをします。
ホモイは足をばたばたして、
「いいよ。もういいよ。だまっておいで」と言《い》いました。
その時|向《む》こうのにわとこの陰《かげ》からりすが
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