むりのようなはんけちを解《と》きました。それはとちの実《み》ぐらいあるまんまるの玉で、中では赤い火がちらちら燃《も》えているのです。
ひばりの母親がまた申《もう》しました。
「これは貝《かい》の火という宝珠《ほうじゅ》でございます。王さまのお言伝《ことづて》ではあなた様《さま》のお手入れしだいで、この珠《たま》はどんなにでも立派《りっぱ》になると申《もう》します。どうかお納《おさ》めをねがいます」
ホモイは笑《わら》って言《い》いました。
「ひばりさん、僕《ぼく》はこんなものいりませんよ。持《も》って行ってください。たいへんきれいなもんですから、見るだけでたくさんです。見たくなったら、またあなたの所《ところ》へ行きましょう」
ひばりが申《もう》しました。
「いいえ。それはどうかお納《おさ》めをねがいます。私どもの王からの贈物《おくりもの》でございますから。お納《おさ》めくださらないと、また私はせがれと二人で切腹《せっぷく》をしないとなりません。さ、せがれ。お暇《いとま》をして。さ。おじぎ。ご免《めん》くださいませ」
そしてひばりの親子は二、三|遍《べん》お辞儀《じぎ》をして、あわてて飛《と》んで行ってしまいました。
ホモイは玉を取りあげて見ました。玉は赤や黄の焔《ほのお》をあげて、せわしくせわしく燃《も》えているように見えますが、実《じつ》はやはり冷《つめ》たく美《うつく》しく澄《す》んでいるのです。目にあてて空にすかして見ると、もう焔《ほのお》はなく、天の川が奇麗《きれい》にすきとおっています。目からはなすと、またちらりちらり美《うつく》しい火が燃《も》えだします。
ホモイはそっと玉をささげて、おうちへはいりました。そしてすぐお父さんに見せました。すると兎《うさぎ》のお父さんが玉を手にとって、めがねをはずしてよく調《しら》べてから申《もう》しました。
「これは有名《ゆうめい》な貝《かい》の火という宝物《たからもの》だ。これは大変《たいへん》な玉だぞ。これをこのまま一生|満足《まんぞく》に持《も》っている事《こと》のできたものは今までに鳥に二人魚に一人あっただけだという話だ。お前はよく気をつけて光をなくさないようにするんだぞ」
ホモイが申《もう》しました。
「それは大丈夫《だいじょうぶ》ですよ。僕《ぼく》は決《けっ》してなくしませんよ。そんな
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