たな》から薬《くすり》の箱《はこ》をおろしました。
「おっかさん、僕《ぼく》ね、もじゃもじゃの鳥の子のおぼれるのを助《たす》けたんです」とホモイが言《い》いました。
兎《うさぎ》のお母さんは箱《はこ》から万能散《まんのうさん》を一服《いっぷく》出してホモイに渡《わた》して、
「もじゃもじゃの鳥の子って、ひばりかい」と尋《たず》ねました。
ホモイは薬《くすり》を受《う》けとって、
「たぶんひばりでしょう。ああ頭がぐるぐるする。おっかさん、まわりが変《へん》に見《み》えるよ」と言《い》いながら、そのままバッタリ倒《たお》れてしまいました。ひどい熱病《ねつびょう》にかかったのです。
*
ホモイが、おとうさんやおっかさんや、兎《うさぎ》のお医者《いしゃ》さんのおかげで、すっかりよくなったのは、鈴蘭《すずらん》にみんな青い実《み》ができたころでした。
ホモイは、ある雲のない静《しず》かな晩《ばん》、はじめてうちからちょっと出てみました。
南の空を、赤い星がしきりにななめに走りました。ホモイはうっとりそれを見とれました。すると不意《ふい》に、空でブルルッとはねの音がして、二|疋《ひき》の小鳥が降《お》りて参《まい》りました。
大きい方は、まるい赤い光るものを大事《だいじ》そうに草におろして、うやうやしく手をついて申《もう》しました。
「ホモイさま。あなたさまは私《わたし》ども親子の大恩人《だいおんじん》でございます」
ホモイは、その赤いものの光で、よくその顔を見て言《い》いました。
「あなた方は先頃《せんころ》のひばりさんですか」
母親のひばりは、
「さようでございます。先日はまことにありがとうございました。せがれの命《いのち》をお助《たす》けくださいましてまことにありがとう存《ぞん》じます。あなた様《さま》はそのために、ご病気《びょうき》にさえおなりになったとの事でございましたが、もうおよろしゅうございますか」
親子のひばりは、たくさんおじぎをしてまた申《もう》しました。
「私どもは毎日この辺《へん》を飛《と》びめぐりまして、あなたさまの外へお出なさいますのをお待《ま》ちいたしておりました。これは私どもの王からの贈物《おくりもの》でございます」と言《い》ながら、ひばりはさっきの赤い光るものをホモイの前に出して、薄《うす》いうすいけ
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