みんな泣《な》いていました。雀《すずめ》や、かけすや、うぐいすはもちろん、大きな大きな梟《ふくろう》や、それに、ひばりの親子までがはいっているのです。
 ホモイのお父さんは蓋《ふた》をあけました。
 鳥がみんな飛《と》び出して地面《じめん》に手をついて声をそろえて言《い》いました。
 「ありがとうございます。ほんとうにたびたびおかげ様《さま》でございます」
 するとホモイのお父さんが申《もう》しました。
 「どういたしまして、私どもは面目《めんもく》次第《しだい》もございません。あなた方の王さまからいただいた玉《たま》をとうとう曇《くも》らしてしまったのです」
 鳥が一|遍《ぺん》に言《い》いました。
 「まあどうしたのでしょう。どうかちょっと拝見《はいけん》いたしたいものです」
 「さあどうぞ」と言《い》いながらホモイのお父さんは、みんなをおうちの方へ案内《あんない》しました。鳥はぞろぞろついて行きました。ホモイはみんなのあとを泣《な》きながらしょんぼりついて行きました。梟《ふくろう》が大股《おおまた》にのっそのっそと歩きながら時々こわい眼《め》をしてホモイをふりかえって見ました。
 みんなはおうちにはいりました。
 鳥は、ゆかや棚《たな》や机《つくえ》や、うちじゅうのあらゆる場所《ばしょ》をふさぎました。梟《ふくろう》が目玉を途方《とほう》もない方に向《む》けながら、しきりに「オホン、オホン」とせきばらいをします。
 ホモイのお父さんがただの白い石になってしまった貝《かい》の火を取りあげて、
 「もうこんなぐあいです。どうかたくさん笑《わら》ってやってください」と言《い》うとたん、貝《かい》の火は鋭《するど》くカチッと鳴って二つに割《わ》れました。
 と思うと、パチパチパチッとはげしい音がして見る見るまるで煙《けむり》のように砕《くだ》けました。
 ホモイが入口でアッと言《い》って倒《たお》れました。目にその粉《こな》がはいったのです。みんなは驚《おどろ》いてそっちへ行こうとしますと、今度《こんど》はそこらにピチピチピチと音がして煙《けむり》がだんだん集《あつ》まり、やがて立派《りっぱ》ないくつかのかけらになり、おしまいにカタッと二つかけらが組み合って、すっかり昔《むかし》の貝《かい》の火になりました。玉はまるで噴火《ふんか》のように燃《も》え、夕日《ゆうひ》の
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