ようにかがやき、ヒューと音を立てて窓《まど》から外の方へ飛《と》んで行きました。
 鳥はみんな興《きょう》をさまして、一人|去《さ》り二人|去《さ》り今はふくろうだけになりました。ふくろうはじろじろ室《へや》の中を見まわしながら、
 「たった六日《むいか》だったな。ホッホ
  たった六日だったな。ホッホ」
 とあざ笑《わら》って、肩《かた》をゆすぶって大股《おおまた》に出て行きました。
 それにホモイの目は、もうさっきの玉のように白く濁《にご》ってしまって、まったく物が見えなくなったのです。
 はじめからおしまいまでお母さんは泣《な》いてばかりおりました。お父さんが腕《うで》を組んでじっと考えていましたが、やがてホモイのせなかを静《しず》かにたたいて言《い》いました。
 「泣《な》くな。こんなことはどこにもあるのだ。それをよくわかったお前は、いちばんさいわいなのだ。目はきっとまたよくなる。お父さんがよくしてやるから。な。泣《な》くな」
 窓《まど》の外では霧《きり》が晴《は》れて鈴蘭《すずらん》の葉《は》がきらきら光り、つりがねそうは、
 「カン、カン、カンカエコ、カンコカンコカン」と朝の鐘《かね》を高く鳴《な》らしました。



底本:「銀河鉄道の夜」角川文庫、角川書店
   1969(昭和44)年7月20日初版発行
   1991(平成3)年6月10日65刷
底本の親本:「第二次宮沢賢治全集 第十巻」筑摩書房
   1969(昭和44)年初版発行
※本作品中には、身体的・精神的素質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代的背景と価値、加えて作者の抱えた限界を読者自身が認識するこのと意義を考慮し、底本のままにしました。(青空文庫)
入力:ゆかこ
校正:林 幸雄
2001年2月15日公開
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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