でも何でもこわくないぜ。」
「ほしいもんだなあ。」
「手に入れる工夫《くふう》はないだろうか。」
「ないわけでもないだろう。ただ僕たちのはヘロンのとは大きさも型も大分ちがうから拵《こしら》え直さないと駄目《だめ》だな。」
「うん。それはそうさ。」
さて雲のみねは全くくずれ、あたりは藍色《あいいろ》になりました。そこでベン蛙とブン蛙とは、
「さよならね。」と云《い》ってカン蛙とわかれ、林の下の堰を勇ましく泳いで自分のうちに帰って行きました。
*
あとでカン蛙は腕《うで》を組んで考えました。桔梗色《ききょういろ》の夕暗《ゆうやみ》の中です。
しばらくしばらくたってからやっと「ギッギッ」と二声ばかり鳴きました。そして草原をぺたぺた歩いて畑にやって参りました、
それから声をうんと細くして、
「野鼠《のねずみ》さん、野鼠さん。もうし、もうし。」と呼びました。
「ツン。」と野鼠は返事をして、ひょこりと蛙の前に出て来ました。そのうすぐろい顔も、もう見えないくらい暗いのです。
「野鼠さん。今晩は。一つお前さんに頼《たの》みがあるんだが、きいて呉《く》れないかね。」
「いや、
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