うぶ》だ。おや。君の靴がぼろぼろだね。どうしたんだろう。」
実際ゴム靴はもうボロボロになって、カン蛙の足からあちこちにちらばって、無くなりました。
カン蛙はなんとも言えないうらめしそうな顔をして、口をむにゃむにゃやりました。実はこれは歯を食いしばるところなのですが、歯がないのですからむにゃむにゃやるより仕方ないのです。二疋はやっと手をはなして、しきりに両方からお世辞を云いました。
「君、あんまり力を落さない方がいいよ。靴なんかもうあったってないったって、お嫁《よめ》さんは来るんだから。」
「もう時間だろう。帰ろう。帰って待ってようか。ね。君。」
カン蛙はふさぎこみながらしぶしぶあるき出しました。
*
三疋がカン蛙のおうちに着いてから、しばらくたって、ずうっと向うから、蕗《ふき》の葉をかざしたりがまの穂《ほ》を立てたりしてお嫁さんの行列がやって参りました。
だんだん近くになりますと、お父さんにあたるがん郎《ろう》がえるが、
「こりゃ、むすめ、むこどのはあの三人の中のどれじゃ。」とルラ蛙をふりかえってたずねました。
ルラ蛙は、小さな目をパチパチさせました。と
前へ
次へ
全18ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮沢 賢治 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング