こを通って行こう。」
「おい。ここはよそうよ。もう帰ろうよ。」
「いいや折角《せっかく》来たんだもの。も少し行こう。そら歩きたまえ。」二疋は両方からぐいぐいカン蛙の手をひっぱって、自分たちも足の痛いのを我慢しながらぐんぐん萱の刈跡をあるきました。
「おい。よそうよ。よして呉れよ。ここは歩けないよ。あぶないよ。帰ろうよ。
「実にいい景色だねえ。も少し急いで行こうか。と二疋が両方から、まだ破けないカン蛙のゴム靴を見ながら、一緒に云いました。
「おい。よそうよ。冗談《じょうだん》じゃない。よそう。あ痛っ。あぁあ、とうとう穴があいちゃった。」
「どうだ。この空気のうまいこと。」
「おい。帰ろうよ。ひっぱらないで呉れよ。」
「実にいい景色だねえ。」
「放して呉れ。放して呉れ。放せったら。畜生。」
「おや、君は何かに足をかじられたんだね。そんなにもがかなくてもいいよ。しっかり押《おさ》えてやるから。」
「放せ、放せ、放せったら、畜生。」
「まだかじってるかい。そいつは大変だ。早く逃《に》げ給え。走ろう。さあ。そら。」
「痛いよ。放せったら放せ。えい畜生。」
「早く、早く。そら、もう大丈夫《だいじょ
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